2018.01.18

ていねいの甘さ

 新年のせわしなさのなか、ふと思い立って干し芋をつくる。年賀状にお節に大そうじ、やるべきことに心を揺さぶられ、右へ左へ、気持ちがゆらゆらと波立つ。面倒で手間のかかることに向きあううちに、ざわざわとした風が和らいでいく。朝になったら洗濯物とともにベランダに吊るし、夜になれば部屋に戻す。冷たい冬の空気に鼻をとがらせ、雨雪の匂いがすれば、あわてて部屋へ取りこむ。

 ていねいな仕事を根気よくつづけるのはむずかしい。趣味や気分転換でできても、それを生業とし、日々の営みとして続けるのは、途方もない忍耐と集中力がいる。気を抜けば、あからさまに結実にあらわれる。あわただしくつくった梅酒やらっきょうの酢漬けは、悲しいほどしまらない味がする。いつまでも中身の減らない保存瓶を横目に感じながら、どんよりとした数か月を送ることになる。自らに備わらなかった一途さを持つ人たちには、ほんとうに頭のさがる思いがする。

 日を追うごとに水気が抜け、身を縮めていく芋を日々ながめる。ちかごろの柔らかい干し芋ではなく、かつて食べていたような、歯ごたえがあり、固い身にぎゅっとうま味が濃縮された干し芋が好きで、あれこれ試行錯誤する。カレンダーを見つめ、今年はあと何回干し芋がつくれるかを考える。味見と称して、日に数枚ずつが誰かの口に収まっていく。干しカゴにみっちり敷きつめられていた干し芋は、完成を前にして、もう半分はどこかに消えてしまっている。

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