2017.08.13

夏の赤

 夏のトマトは赤い。空の青と、夏野菜の緑に映えて、まっかに赤い。八百屋の店先でも、いやおうなしに目にとまる。

 子どものころに食べたトマトは、いまほどさっぱりと甘い味ではなかった。酸味があり、青々しく、かじりつくと唇のまわりがひりひり痛んだ。ぴしっと冷えたトマトは、マヨネーズではなく、塩のとがったからさによくあった。外で遊んで汗だくになったとき、体にしみるこの味がたまらなかった。祖父母に注意されながら、お腹をこわすまで食べつづけた。

 しんわルネッサンスさんにうかがったとき、作業場はトマトの香りでいっぱいだった。ケースいっぱにつまれたトマトからひろがるのは、やさしいだけではなく、どこかそっけなく、するどく、透き通った匂い。そうだ、この匂い。あのころのまっすぐなトマトの匂い。太陽や大地の力強さの匂い。必死に育ってきた、植物の生命力の匂い。

 施設からの帰り道、駅でトマトジュースをいただく。疲れ切った足腰が、みるみる元気になっていくように感じる。太陽と大地と生命の赤が、全身に満たされていく。

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